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魔法少女リリカルなのはI’s







どこまでも広く青い空の中、クロノ・ハラオウンは深く細い溜息を一つついた。

ここは、時空管理局の戦闘訓練空域。
クロノはほんの数分前まで、ここで模擬戦闘をする予定だった。
相手は『AAAクラスの魔道師・高町なのは』

もともと、誘ってきたのは彼女の方で、術式展開の速度向上と、新たな魔術の実践演習が主な目的。
そのことに対して、クロノに異論はなかった。むしろ、彼女クラスの魔術師と実践的な訓練できることはありがたいこと。
そう思い、クロノは二つ返事でそれを快く引き受けた。


しかし………




  ―――― クロノ君のデュランダルと、私のレイジングハートをかけて勝負しよう ―――――





空域に到着した途端、彼女が言った、その言葉。







「くそっ!!」

クロノ・ハラオウンは独り、強く息を吐き捨てた。












     螺旋が刻む旋律は
                      少女の歩み、道標


     時の軋む、紡ぎ唄
                      世界の歪み、空の狭間


     
     軋む歯車は、刻みだす
                      謡う少女の旋律を


     歩む境を繋ぐのは
                      異柩な未知の亡き導

















――――― 魔法少女 リリカルなのは I's    
                           はじまります ―――――



              第一話 「白い悪魔」






















「ちっ!!」

空に浮いたクロノはなのはの仕掛けたバインドを舌打ちをしながらかわした。

(少し相手をしないうちに、随分と上手くなってる)

昔のなのはならば、まず仕掛けられなかったであろう巧妙な魔法の遅延発生。
完全に意表を突かれることこそないものの、しかし、気を抜けば確実に命取りになるほどの精度は保っている。
多重に仕掛けられたバインドと連動するよう、多角的に迫ってくるアクセルシューターの群を受け流して回避行動を取りつつ、クロノも反撃の詠唱を始める。

もとより彼には、なのはとの勝負において真っ向から撃ち合いをするつもりはなかった。
彼女の圧倒的なまでの魔力量を前にして、そのような選択肢は存在しない。

(砲撃をかわしつつ、油断した一瞬でカウンターを決める)

フェイトのような魔力量を持たず、
ベルカの騎士たちのような強力なデバイスも持たない、

そんなクロノ・ハラオウンが取れる戦術など、それくらいしかない。

「ディバイーン、バスターッ!!」

無数の弾幕を切り抜けたクロノの眼前に、桃色の光線が迫る。
なのはにとって、先ほどのバインドとシューターの連携は、標的の軌道を限定するためのものでしかなかったのだ。
一撃必殺の砲撃力を持つ彼女にとって、すべての補助魔法はそれを命中させるためだけに存在する。
しかし、………

「あまい!!」

クロノは迫り来る光線をいとも簡単に回避する。

それは、論理に基づいた冷静な予測だった。

この激しい戦闘の中、彼は思考し続けていたのだ。
知らぬ相手ではない。むしろ知りすぎているくらいの相手。
戦闘の進行をリアルタイムで予測するのは、クロノにとってそれほど困難なことではない。

彼女の砲撃が止むのを待たず、彼はあらかじめ用意しておいたバインドを発動させる。
先ほど、なのはのバインドを回避した時に仕掛けた遅延発生型の拘束魔法。
無数の補助魔法を師匠に叩き込まれ、そして自身でもその習得に懸命に取り組んだクロノの奥の手。
これを即座に解除できるのは、知人の使い魔であり、師でもある、リーゼロッテ、アリア姉妹くらいのものだろう。

勝負あり。

クロノがそう確信してなのはの方を確認すると、案の定バインドに縛られた少女がもがいていた。
手ごわかったが辛くも勝利を収めることができた。
さすがはAAA(トリプルエー)クラスの魔道師と言ったところだった。

クロノはなのはの眼前まで飛翔すると声をかける。

「なのは、僕の勝ちだ」

対する少女は、勝負を諦めていないのか、まだもがいている。

「無駄だよ、なのは。それは、小手先の抵抗で解けるような代物じゃない」

幾重にも巻かれた淡い青色に輝く縄を見つめながらクロノは言葉を続けた。
これを無理やりに力ずくで解こうとするならば、それこそ、なのはの残った魔力をすべて消費するくらいの力をこめなくてはいけない。
仮に、そうやってバインドを解いたとしても、もう彼女に戦闘を行うだけの魔力は残らない。

プラン通りの結末に満足しつつ、クロノは内心ほっとため息をついていた。

当然のことではあるが、彼は最初からこの勝負に乗り気ではなかったのだ。
魔道師が自身のデバイスをかけて勝負をするなんて、はっきり言って異常である。

しかし、なのはの真剣な瞳を見て、それを断ることができなかったのも事実。
とにかくクロノにはこの戦闘に勝つしか選択肢はなかった。
そしてその後、彼女にその行為に至った事情を聴くつもりだった。

何はともあれ上手くいってよかった。安堵し、クロノは戦闘状態の緊張を解く。


その刹那。

「レイジングハート!!」

なのはは自らのインテイジェントデバイスの名前を高らかに叫んだ。
それと同時に彼女を激しい閃光が包む。
唐突な衝撃と輝きにクロノは思わず目を瞑る。

数瞬の後、クロノがまぶたを開くと、そこには疲弊しきったなのはの姿が………

(あのバインドを力ずくで解除したのか!?)

見るからに満身創痍の少女は、それでも、こちらをねめつける。

クロノは瞬間的に再び戦闘態勢をとった。
なのはクラスの術者に不意を突かれれば、さすがのクロノもただでは済まない。

が、その行為は杞憂に終わる。

たしかに、なのはを拘束していたバインドは解けていた。
しかし、本来純白であるはずの彼女のバリアジャケットは所どころ煤け、空中姿勢を支えるはずの足元の羽も消えかけている。。
こんな状態では満足に飛翔することさえ難しいだろう。
その現状を再度確認し、クロノは少女に語りかける。

「なのは、もう勝負はついた。今の君では、戦闘を続行することは難しい。この勝負は僕の勝ちだ」

冷静な、誰にでもできる判断。
それを明らかな決着と取り、クロノはなのはと共に帰艦するため、手を差し伸べる。
そうして、少年が気を緩めたその瞬間

   シュピン

乾いたバインドの発動音がクロノを取り囲んだ。
そう、それはいつだったか、リーゼロッテ、アリア姉妹がなのはとフェイトの二人を同時に押さえつけて見せた、4つのバインドとクリスタルケイジという拘束魔法の上級連携。

「なっ!?」

一瞬。クロノは自身の現状を疑った。
ありえない。言葉にすればそんなところだ。
上級魔法の連携発動。
そんな魔力は彼女のどこにも残っていないはず、そう判断して戦闘行動を終了したのだ。

動揺するクロノの前。慈しむように、なのはは心の名をつぶやいた。

「……レイジングハート……」

桃色の光が彼女を包み込み、一瞬の時が過ぎる。
そうして再び現れたその姿は、まるで無傷の、決戦開始時と同じ純白の戦闘服に包まれていた。
魔力が尽きたはずの魔法師が上級魔法を連発し、自身の防護服を再構成する。常識では考えられない事態。

「油断したね? クロノ君」

唖然とするクロノに、そっとほほ笑む少女。
優越の笑みだろうか。そんな表情、彼女には似合わない。

「君の魔力は残っていなかった筈だ、どうして?」

理解しがたいことだった。
そして、少女は疑問に答える。

「うん、そう。クロノ君のバインドを解いた時、たしかにわたしの魔力は底をついた。……でもね、これ、なーんだ?」

少女が微笑み、取り出したのは碧く光る菱形の宝石。
それは、かつてクロノも目にしたことのある輝き。

「まさか!? ジュエルシード!?」

予期せぬ光景に思わず声をもらす。
自分たちが過去に関わり、解決したはずの忌まわしきロストロギア。
それが今、有り得ない事に彼の目の前に存在している。
奇しくも、事件解決に多大な功績を挙げた少女の手中に収まるという形で……。

「失われたジュエルシードは21個。そのうち12個を巡航L級8番艦アースラが回収。
 残る9個はプレシア・テスタロッサ、時の庭園と共に時空の挟間に飲み込まれた。」

なのはは、まるで詩の一節を詠むかのごとく、すらすらと言葉をつむぐ。

「これが、みんなの知っている『P・T事件』の結末。
 でもね、クロノ君。
 もとあったのが21個で、そのうち回収されたのが12個だからと言って、
 残る9個全てをプレシア・テスタロッサさんが持ち去ったとは、限らないんじゃないのかな?」

なのはの無垢な笑顔と共に驚愕の事実が解き明かされる。

「なのは!! やめるんだ。そんなものを持っていても、いいことなんか何もない!!」

執務官としてでも、ロストロギアに家族を奪われた者としてでもなく、なのはの友人としてクロノは声を荒らげた。
しかし、彼の言葉が少女に届くことはない。

「……クロノ君、うるさいよ」

普段の明るい声からは想像もできないほどに押し殺した暗い声が、彼女の口から聞こえた。


キィーーン


と、クロノの耳に聞きなれた音がこだまする。

『スターライトブレイカー』

星の光と名づけられたその砲撃は、ミッドの歴史上でも稀に見る強力な魔法。
それが、今、クロノの前で着々と展開されつつある。

「思いだけでも、言葉だけでも、誰にも伝わらない……」

だから、と少女は杖の先端を少年に向けたまましゃべり続ける。
桃色の光が、クロノの魔力をも吸収してほんのりと蒼く染まる。

「……だけど、捨てればいいってわけじゃない、逃げればいいってわけじゃ、……もっとないっ!!」

いつか聞いた。少女の決意の言葉。
それを向けられた彼女も、それを向けた彼女も、あるいは、それを聞いた彼も。
あのときは、皆、等しく思ったはずだ。


      こんな思いはもうしたくない


それでも、彼女は親友に杖を向けた。
心優しい彼女を、それほどまでにつき動かしたものは何なのか。
今のクロノにはわからぬまま、術式の展開が完了する。

少女はその目に涙を浮かべ、高らかに声をあげた。


「スターライト、ブレイカー!!」


そうして、クロノ・ハラオウン執務官の意識は途切れる。

その後、白い悪魔と氷上の杖は行方をくらましたそうだ。

彼女の行く末を知るものは、……まだいない。








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ぴんくいくま

Author:ぴんくいくま
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 『歌に形はないけれど』
by フニ子

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